• 9月 26, 2026

主席卵胞が決まる仕組み ―「なぜ毎月1つだけ排卵するのか」

秋葉原ART Clinic院長の湯です。今回は、「主席卵胞が決まる仕組み」について解説します。
卵巣にはたくさんの卵胞があるのに、なぜ毎月排卵するのは基本的に1つだけなのでしょうか?

月経が始まる頃、卵巣の中には複数の小さな卵胞が見られます。それらの卵胞は同時に発育を始めますが、最終的に排卵まで進むのは、通常その中の1つです。

この卵胞を主席卵胞(Dominant follicle)と呼びます。

では、たくさんの卵胞の中から、なぜ1つだけが選ばれるのでしょうか。

主席卵胞が決まる仕組み

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複数の卵胞が、同時に発育を始めます

月経周期の初め、卵巣の中には複数の胞状卵胞が存在します。

実はFSH(卵胞刺激ホルモン)の上昇は、月経開始の数日前(前の周期の黄体期の終わり)からすでに始まっています。このFSHの働きによって、複数の卵胞が一斉に発育を始めます。

つまり、最初から「この卵胞だけが排卵する」と決まっているわけではなく、複数の卵胞が同じように発育のスタートラインに立っているのです。

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卵胞にも「FSHへの感度の違い」があります

発育を始めた複数の卵胞ですが、すべてがまったく同じように成長するわけではありません。卵胞によって、FSHに対する反応(感度)に微妙な違いがあります。

医学的には、発育に必要なFSHの量の目安をFSH閾値(いきち)と呼びます。その中で「少ないFSHでも効率よく発育できる卵胞=FSH閾値が低い卵胞」が、次第にほかの卵胞よりも大きくなっていきます。

このようにして少しずつ成長に差が生まれ、最も発育が進んだ1つの卵胞が、やがて主席卵胞として選ばれていきます。この「選択」は、月経開始から5〜7日目ごろに起こるとされています。

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主席卵胞が育つと、FSHが減少します

主席卵胞へと成長した卵胞は、女性ホルモンであるエストロゲンに加えて、インヒビンBというホルモンも多く分泌するようになります。

これらが脳の下垂体にネガティブ・フィードバックとして働くことで、FSHの分泌量は次第に低下していきます。すると、ほかの卵胞にとっては「成長を続けるためのFSHが足りない」という状態になり、発育を維持できず途中で成長を止めて退縮していきます。これを卵胞閉鎖(Atresia)と呼びます。

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「最も効率よく育った1つ」が最後まで残る

簡単にいうと、卵胞が選ばれる流れは以下の通りです。

  1. 月経の数日前からFSHが上昇し、複数の胞状卵胞が同時に発育を始める
  2. FSHに最もよく反応する(FSH閾値が低い)卵胞が少しずつ大きくなる
  3. その卵胞からエストロゲンとインヒビンBが多く分泌される
  4. 脳(下垂体)からのFSH分泌が低下する
  5. ほかの卵胞はFSH不足で発育を続けられず、退縮する(卵胞閉鎖)
  6. 最も発育が進んだ1つの卵胞だけが主席卵胞として残り、さらに成熟して排卵へ進む

まるで、たくさんのランナーが一斉にスタートし、最も効率よく走れた1人だけがゴール(排卵)に到達するような仕組みです。

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必ずしも毎回1つとは限りません

自然周期では、通常は1つの主席卵胞が選ばれ、1個の卵子が排卵されます。

ただし、必ずしも毎回1つとは限りません。まれに複数の卵胞が同時に十分発育することがあり、その場合には複数の卵子が排卵され、二卵性双胎(双子)などにつながることもあります(自然周期での二卵性双胎の頻度はおよそ1〜2%で、年齢や体質によって変わります)。

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まとめ

つまり、「最初から1つの卵胞だけが育つ」のではなく、「競い合いの中で勝ち残った1つが主席卵胞になる」ということです。

この「卵胞の選択」という仕組みを知っておくと、通常の排卵プロセスだけでなく、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)などの排卵障害や、不妊治療で行う排卵誘発の仕組みについても理解しやすくなります。

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【参考文献】

Stochastic mechanism of dominant follicle selection. J R Soc Interface. 2025. royalsocietypublishing.org

Zeleznik AJ. The physiology of follicle selection. Reprod Biol Endocrinol. 2004;2:31. link.springer.com

Schipper I, et al. The FSH threshold/window concept. J Clin Endocrinol Metab. 1998;83(4):1292-7. PubMed

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