• 9月 3, 2026
  • 9月 5, 2026

PCOSは不妊になるの?――妊娠を希望したとき、まず何をする?

「PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)だと、赤ちゃんは授かりにくいの?」

外来で、本当に多くいただく質問です。

まず結論からお伝えします。

「PCOS=不妊」ではありません。

PCOSは、卵巣の中に育ち始めた小さな卵胞が多くみられることが特徴の一つです。

では、なぜ妊娠しにくくなることがあるのでしょうか?

────────

🔍 「卵子が少ない」のではなく、「排卵しにくい」

通常、卵巣では複数の卵胞が育ち、その中から1つの卵胞が十分に成熟して排卵します。

しかしPCOSでは、このプロセスがスムーズに進まないことがあります。

「卵胞は育ち始めているのに、1つの卵胞が十分に成熟し、排卵まで進みにくい」

ことが、妊娠しにくくなる主な原因の一つです。

つまり、卵子がないのではなく、**「数は十分あるのに、排卵しにくい状態」**と言えます。

排卵の回数が少なくなれば、その分、自然妊娠の機会も少なくなります。

────────

🏥 妊娠を希望したら、すぐ体外受精?

PCOSだからといって、いきなり体外受精を行うわけではありません。

まずは、年齢や月経・排卵の状態、不妊期間、パートナーの検査結果などを確認し、その方に合った治療を考えていきます。

タイミング療法

排卵の時期を予測し、適切なタイミングで性交渉を行います。

自然に排卵している場合や、排卵誘発によって排卵が期待できる場合に選択されます。

排卵誘発

飲み薬や注射を用いて、卵胞の発育と排卵をサポートします。

PCOSでは、排卵を整えることが妊娠への大切なステップになることがあります。

人工授精・体外受精

タイミング療法や排卵誘発で妊娠に至らない場合、あるいは男性側の不妊原因など、ほかの要因がある場合には、人工授精や体外受精を検討します。

どの治療を、どのタイミングで行うかは、

  • 年齢
  • 不妊期間
  • 排卵の状態
  • 卵管や精液検査の結果
  • これまでの治療歴

などを総合的に判断して決めていきます。

────────

💡 知っておきたい「年齢」との関係

PCOSの方は、卵巣内に多くの小さな卵胞がみられ、AMHが高めになることがあります。

しかし、「卵胞が多いこと」と「卵子の質」は別の問題です。

PCOSだからといって、年齢による卵子の変化が起こらないわけではありません。

特に35歳頃からは、年齢に伴う卵子の変化についても考慮する必要があります。

若い方・不妊期間が短い場合

まずは排卵を整えながら、タイミング療法や排卵誘発などから治療を進めることがあります。

35歳以上・不妊期間が長い場合

年齢やこれまでの治療経過を考慮し、必要に応じて人工授精や体外受精へのステップアップを早めに検討することがあります。

このように、PCOSという診断だけで治療方針を決めるのではなく、年齢や不妊期間によって治療のスピード感を変えることも大切です。

────────

🍀 まとめ

PCOSを、「妊娠できる・できない」の二択で考える必要はありません。

PCOSでは、排卵を適切にサポートすることで、妊娠・出産に至ることは十分に可能です。

大切なのは、

  • 排卵の状態を確認すること
  • 年齢を考慮すること
  • ほかの不妊原因がないか確認すること
  • ご自身に合った治療のペースを考えること

です。

PCOSだからといって、全員が同じ治療を受けるわけではありません。

大切なのは、ご自身の年齢や卵巣・排卵の状態、不妊期間などに合わせて、「自分に合った治療のロードマップ」を医師と一緒に考えていくことです。

────────

次回は

「PCOSは卵がたくさん取れる?――採卵で知っておきたいこと」

についてお話しします。

────────

監修 Dr. 保母 るつ子

  • 日本専門医機構 産婦人科専門医
  • 日本生殖医学会 生殖医療専門医
  • 日本産科婦人科内視鏡学会 技術認定医(腹腔鏡)
  • 医学博士
秋葉原ART Clinic 03-5807-6888 ホームページ