- 8月 31, 2026
- 8月 28, 2026
月経不順は放置して大丈夫?
生殖医療の現場にいると、月経不順で来院される患者さんに日々多くお会いします。
「昔からこうだから、気にしていません」
「仕事が忙しいので、月経が来ないほうが楽です」
「ピルを飲んでいるから大丈夫だと思っていました」
このようなお声を伺うことは、決して珍しくありません。
確かに、月経不順は日常生活にすぐ大きな支障をきたさないことも多く、つい後回しにされがちです。
しかし、生殖医療の立場から見ると、月経不順は卵巣や排卵の状態を知るための大切なサインであることがあります。
「月経が不規則なのは昔から」とそのままにせず、一度ご自身の卵巣の状態を確認してみることも大切です。
月経不順とは?
一般的に、以下のような状態は月経周期の異常にあたります。
- 月経周期が24日未満、または39日以上、月経周期が大きくばらつく
- 3か月以上月経が来ない
月経不順の原因は一つではありません。
- ホルモンバランスの乱れ
- 排卵障害
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- 急激な体重変化、過度なストレス
など、さまざまな要因が考えられます。
実際の診療で特に意識したい2つのパターン
月経不順の原因はさまざまです。
生殖医療の診療では以下の二つのタイプについて、特に注意して確認することがあります。
① 排卵がうまく起こらないタイプ|多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など
卵胞が育つものの、排卵までに時間がかかったり、排卵が起こりにくかったりするタイプです。
代表的な原因の一つに、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)があります。
PCOSでは、卵巣内に小さな卵胞が多くみられ、排卵が不規則になることがあります。
排卵の状態を確認し、必要に応じて排卵をサポートする治療を行うことで、妊娠につながる方も多くいらっしゃいます。
② 卵巣予備能が低下しているタイプ
卵巣予備能とは、卵巣に残っている卵子の数の目安を示すものです。
年齢とともに卵子の数は減少していきますが、同じ年齢でも卵巣予備能には個人差があります。
卵巣予備能が低下している場合、妊娠を希望する時期によっては、今後の治療方針や妊娠のタイミングについて早めに考えることが重要になる場合があります。
月経不順だけでは、卵巣の状態は判断できません
月経の乱れ方だけでは、「排卵がうまくいっていないのか」「卵巣予備能が低下しているのか」を判断することはできません。
また、これらは原因や治療方針、将来の妊娠への影響も異なります。
そのため、月経不順がある場合には、月経周期だけを見るのではなく、卵巣やホルモンの状態を確認することが大切です。
月経不順なら、どうすればいい?
月経不順の方すべてが、今すぐ不妊治療を始める必要があるわけではありません。
ただし、将来お子さんを希望される可能性がある方は、一度ご自身の卵巣の状態を確認しておくことをおすすめします。
その第一歩として行うのが、血液検査や超音波検査などです。
AMH検査で「卵巣予備能」を確認する
特に卵巣予備能を知るための検査として知られているのが、AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査です。
AMHは、卵巣内に残っている卵胞の数を反映する指標の一つで、卵子の「質」ではなく、卵巣予備能を推測するための目安として用いられます。
ただし、AMHの値だけで妊娠できるかどうかが決まるわけではありません。
年齢、超音波検査で確認する卵胞数、その他のホルモン値、月経や排卵の状態などを合わせて、総合的に判断することが大切です。
原因によって、治療や今後の対策は異なります
検査によって原因や卵巣の状態が分かれば、その方に合わせて治療や今後の対応を考えることができます。
①卵巣予備能が保たれている場合
排卵が不規則になっている原因を確認し、その方の状態に合わせて排卵をサポートする治療などを検討します。
②卵巣予備能が低下している場合
妊娠を希望する時期によっては、時間を意識した治療計画が重要になることがあります。
ただし、AMHが低いからといって、妊娠できないという意味ではありません。
年齢や卵巣の状態、これまでの治療歴などを総合的に考え、必要に応じて体外受精などを含めた治療方法を検討します。
また、現在は妊娠を希望していない場合でも、将来の妊娠を考えて、卵子凍結を選択肢の一つとして検討することもできます。
最後に:「今の自分の状態を知るきっかけ」に
月経不順は、「少し周期が乱れているだけ」と軽く考えられがちです。
しかし、その背景にある原因は人それぞれです。
月経不順があるからといって、すぐに「治療が必要」と考える必要はありません。
まずは、**「今の自分の卵巣や排卵の状態を知るきっかけ」**と考えてみてください。
将来、「あの時、確認しておけばよかった」と後悔しないためにも、少しでも気になることがあれば、一度ご自身の状態を確認してみることをおすすめします。
当院では、月経不順のご相談をはじめ、AMH検査や卵巣予備能の評価、将来の妊娠に向けたプレコンセプションケア、卵子凍結などについてもご相談いただけます。
まずはお気軽にご相談ください。
監修 Dr. 保母 るつ子
- 日本専門医機構 産婦人科専門医
- 日本生殖医学会 生殖医療専門医
- 日本産科婦人科内視鏡学会 技術認定医(腹腔鏡)
- 医学博士