最新型タイムラプスインキュベーターEmbryo Scope Flexを導入しました
当院では、全ての患者様の卵をイムラプスインキュベーターで培養することが可能です。
インキュベーターとは卵を体外で育てる培養器です。従来のインキュベーターは卵の発育状態を観察するために、卵をインキュベーターから外に出さなければなりません。
タイムラプスインキュベーターは内蔵されたカメラと顕微鏡により機器に入れた受精卵を10分などの一定間隔で写真撮影し、連続した写真を動画のように見ることができます。
Embryo Scope Flexは最新型のタイムラプスインキュベーターです。
タイムラプスインキュベーターのメリット
採卵された卵は体内から体外へと温度や空気が全く異なる環境に晒されることになりストレスを与えられてしまいます。そのため、卵はインキュベーターという体内環境に近い状態を維持した培養機器の中で育てていきますが、卵を再び患者様の体内に戻す為には、きちんと受精し順調に育っているかという日々の状態を観察していかなければなりません。
従来型インキュベーターは、卵を機器の中に入れると観察することが出来ないので、観察のたびに外に出さなければなりませんでした。また観察の頻度や時間帯も限定されてしまうため、受精や分割状況が不明瞭な部分がありました。
Embryo Scope Flexは、内蔵されたカメラと顕微鏡により機器に入れた卵を一定間隔で写真撮影し、連続した写真を動画のように見ることができるタイムラプスインキュベーターです。卵を外に出すことなく、安定した環境下での培養、観察をしていくことが可能です。
良好胚の発生促進
体外環境に晒す機会を減らすことで卵のストレスを軽減し良好胚の発生促進が期待されます。
より正確な受精確認
受精確認は、前核と呼ばれる2つの核を観察することで行っています。前核は卵の成長が進む過程で消失するので、これまでの観察時間帯では精子が卵に入った時間や卵の発生速度によっては確認できないことがありました。
タイムラプスシステムでは連続的に卵の写真が撮影されているため、時間を遡って前核を確認することが可能になりました。
分割状況の詳しい把握と移植胚の選択
受精したあとの卵の分割状態が一見同じような卵でも、その過程をみてみると分割中の動きが規則的なものや不規則なものなどさまざまあることがわかります。これまでの限定的な観察結果と比べ情報量が増加し、詳細な卵の成長過程を知れることで、より良い卵を選択して移植していけます。
タイプラプスシステムの導入された各施設より、全年齢層の患者様に対する胚盤胞発生率の向上だけでなく、妊娠率の向上や流産率の低下が報告されています。患者様にもご自身の卵のタイムラプス画像をお見せすることができます。
タイムラプス導入前後の胚盤胞形成率の比較
2020年3月より最新型タイムラプスを導入し、まだ先までデータを追える段階ではないですが現時点で胚盤胞形成率は向上しています。育った卵が妊娠・出産に繋がっていけるよう、一層取り組んでまいりたいと思います。
当院の全胚凍結周期におけるタイムラプスインキュベーターの導入前(152周期・270個の受精卵)と導入後(174周期・268個の受精卵)の比較。