女性の検査項目
- ホルモン検査5種類(E2, LH,P4, FSH, PRL)
- 風疹抗体検査
- 貧血、肝機能、腎機能、糖尿病などの検査
- 甲状腺機能検査(TSH, fT4, TgAb)
- 超音波下子宮卵管造影検査(フェムビュー)
1.経腟超音波検査
子宮・卵巣の超音波画像を画面上で一緒に見ていただきます。
超音波なので体に害はなく、3~4分で終わる簡単な検査ですが、子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮内膜の状態、卵胞の発育など様々な情報を得ることができます。
2.子宮がん検査
20代、30代の女性が患うがんの中で最も多いのが子宮頸がんです。
子宮頸がんは早期発見が大切です。子宮頸がんが多く発生するのは、子宮頸部の入り口である外子宮口のあたりです。がん細胞の増殖はゆっくりで、正常な細胞が浸潤がんになるのに5〜10年以上かかるといわれています。
そのため、定期的に子宮がん検査を受ければ、がんになる前の段階で見つけることが可能となります。
3.AMH(抗ミューラ管ホルモン)検査
血液検査で卵巣内にどれぐらいの卵子の数がのこっているか、つまり卵巣予備能を評価するものです。卵巣年齢は決して実年齢と相関しているわけではありません。
卵巣予備能を知ることは不妊治療の方針を検討するために重要ですし、女性の人生設計にも役に立ちます!
4.感染症スクリーニング検査
B型肝炎、C型肝炎、HIV、梅毒の検査を実施します。これの感染症は妊娠に際し母児ともに影響を与える可能性があります。妊娠前からあらかじめ検査をしておくことが大切です。
5.クラミジア抗体検査
性感染症の一つであるクラミジアの感染によって炎症を起こし、卵管に水が溜まったり(卵管水腫)、卵管が詰まったり(卵管閉塞)してしまうことがあります。不妊の原因の一つとしてよく知られています。
陽性の場合、夫婦で治療していく必要があります。抗生剤を内服して治療を行います。また、女性には卵管の検査もおすすめします。
6.ホルモン検査5種類(E2, FSH, LH, P4, PRL)
血液検査で排卵や妊娠にかかわる5種類の基礎ホルモンを調べます。
FSHは卵巣機能を知る良い指標となります。LHは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断指標の一つです。PRLは不妊の原因、着床障害の原因とされる高プロラクチン血症の診断指標となります。
排卵後形成される黄体から黄体ホルモン(P4)が分泌されます。黄体ホルモンは基礎体温を上昇させ、着床しやすいよう子宮内膜の環境を整える作用があり、高温期7日目頃黄体ホルモンが10 ng/ml以下なら黄体機能不全が疑われます。
7.風疹抗体検査
妊娠中に風疹にかかると、赤ちゃんに様々な障害を及ぼす危険があります。難聴(耳がよくきこえない)、白内障(目のレンズが白く濁り、よく目がみえない)、心臓構造異常(心臓の形の異常)などが挙げられます。これら障害が発生した場合、先天性風疹症候群(CRS, congenital rubella syndrome)と診断されます。特に妊娠初期(4週〜5週頃)に風疹にかかった場合、半数以上先天性風疹症候群を発症したという報告があります。
妊娠を考えているご夫婦は風疹の抗体検査をおすすめします。抗体がない、あるいは抗体が十分でない場合には、ワクチン接種が勧められます。なお、風疹ワクチン接種後2か月間は避妊が必要です。
8.貧血、肝機能、腎機能、糖尿病などの検査
将来の妊娠に際し母児共に影響を与える可能性のある疾患をあらかじめ血液検査します。
9.甲状腺機能検査(TSH, fT4, TgAb)
甲状腺ホルモンは脳の発達をはじめ器官の成長・発育作用、全身のバランスを調整する働きがあります。機能亢進、あるいは低下、どちらも不妊や流産の原因になります。妊娠後も胎児の発育に影響しやすいとされています。
スクリーニング検査で陽性の方は必要に応じて専門医を紹介します。
10.超音波下子宮卵管造影検査(フェムビュー)
不妊原因の3割が卵管因子と言われています。両側の卵管が詰まっている場合、妊娠には必須である卵子と精子の出会いは不可能となります。そのため、卵子を体外に取り出し、精子と受精させてから子宮に戻す方法――体外受精が必要となります。卵管の評価を行うことは治療方針を決めるために非常に大切です。
「フェムビュー」は、生理食塩液と空気の混合液を子宮腔内に注入することで超音波子宮卵管撮影での卵管の評価が可能となります。超音波画像のため、放射線被曝がなく、 X線ヨード造影剤も必要ありません。
男性の検査項目
精液検査と血液検査(感染症、ホルモン)は必須検査で、高度精子精液機能検査は推奨検査です。
1.精液検査
精子の量、濃度、運動率、正常形態率などを知ることができます。
WHO(世界保健機関)の基準値を下回ると、自然妊娠の可能性は低いとされています。不妊期間、女性の状況、精液所見などを合わせて総合的に判断し、治療方針を提案いたします。
WHOマニュアル2021による精液検査の基準値
精子量 | 1.4 ml 以上 |
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精子濃度 | 16 x 106/ml以上 |
運動率 | 42% 以上 |
正常形態率 | 4% 以上 |
総精子数 | 39 x 106/ml以上 |
精液検査の注意事項
- 禁欲時間:2日以上7日以内とします。
- 初診時精液検査と血液検査を行います。
精液検査の受付時間:平日の9:00~13:00、14:30~15:00、土日祝の9:00~13:00となっています。
精液検査受付時間外で初診された場合、血液検査のみを行います。
後日に受付時間内で再度ご来院頂き、検査を行います。院内採精ではなく、ご自宅で採精、持込検査をご希望の場合は、初診時にご相談ください。
2.血液検査
- 感染症:B型肝炎、C型肝炎、エイズ(HIV)、梅毒
- 内分泌(ホルモン)検査:
FSH(卵胞刺激ホルモン):脳下垂体から分泌されるホルモンで、精巣を刺激して精子を作るよう促します。
LH(黄体刺激ホルモン):FSHと同様に脳下垂体から分泌されるホルモンです。精巣を刺激して男性ホルモの分泌を促します。
テストステロン(男性ホルモン):精巣から分泌されるホルモンです色々な役割がありますが、精子形成に必須です。
3.高度精子精液機能検査:精子クロマチン構造検査(SCSA)と抗酸化力検査(TAC)
通常の精液検査で分からない精子の質と精液中の酸化ストレスへの抵抗力を調べます。
これらの結果は人工授精や体外受精などの治療方針を決める際に参考にすることができます。
○精子クロマチン構造検査(SCSA: Sperm Chromatin Structure Assay)
クロマチンというのは細胞核にあるDNAとタンパク質の複合体です。
精子クロマチン構造検査は、精液または洗浄後の精子を用いて蛍光染色を行い、DNAが損傷している精子の割合DFI値(DNA fragment index, DNA断片化指数)と核が未熟な精子の割合HDS値(High DNA stainability)を調べる検査です。
通常の精液検査で問題がないとされていた方でも、DNAが損傷している精子や核が未熟な精子の割合が高い場合、受精率や妊娠率が低くなったり、流産率が高くなったりすることがあると言われています。
○抗酸化検査(TAC:Total Antioxidant Capacity)
抗酸化力検査とは、精液中の酸化ストレスへの抵抗力を測定する検査です。
抗酸化力は不妊男性では低いことが報告されています。抗酸化力は生活習慣の改善や、サプリメントの摂取で高めることができ、DNAの損傷率を軽減するとの報告があります。